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★いなむらの火って知っていますか?

jf3tbm2005-05-08

【写真:江戸時代に建設された大津波防止のスーパー堤防和歌山県有田郡広川町)】


国語の教科書でも採用されたり、各地で人形劇や紙芝居で伝承されている『稲むらの火』のお話です。災害は忘れた頃にやってくるのが定説で、江戸時代の末期に起きた安政の大地震安政南海地震)のときに収穫を待つ稲に火をつけ、暗がりの道を明るくし高台まで誘導し村人を大津波から救ったのが『稲むらの火』。その後『将来も定期的に村を襲う大津波』から村人を守るために巨額の私財を投じて『大堤防』を作り、昭和の南海地震の際にも住民の生命を守った『広村堤防』が現在でも残っています。堤防の作り方は、今の『スーパー堤防』の原形とも言われ、防災や建設に関わる方には一見の価値あり・・・と思います。


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◆今も残る江戸時代末期のスーパー大堤防
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稲むらの火』のお話しは、決して作り話ではなく、
そのモデルとなった実話が存在しています。




舞台は現在の和歌山県有田郡広川町




時は、1854年(安政元年)に起きた大地震の際に、
紀州和歌山藩広村(現在の和歌山県広川町)で実際に
あった話がもとになっています。この年の12月23
日と24日(旧暦11月4日、5日)、東海以西の太
平洋の海底で二つの巨大地震が相次いで発生しました。




いわゆる『安政東海地震』と『安政南海地震




この2つの大地震が、32時間の間隔で発生し、東海
〜近畿〜四国を中心に、震害と津波により大災害をも
たらしました。紀州広村は紀伊半島の西海岸にあるた
め、二番目の『安政南海地震』による津波被害が大き
かったと伝えられています。




399戸のうち125戸が流失、36人の死者が出た




当時この広村に、醤油の製造業を営む浜口儀兵衛とい
う人物がいました。彼は名家の主人として、何かと村
人の面倒を見、自分を犠牲にしてまで村のために尽く
したので、村人からたいへん慕われていたとか。




このとき儀兵衛は34歳だったという




儀兵衛の手記によれば、最初の地震つまり『安政東海
地震』のとき、彼は老人や女子供を避難させたり、若
者に村内の見まわりをさせて警戒に当たらせた。だが
この地震は、震源域がやや遠かったため、広村にほと
んど被害は出なかったのだそうです。




翌日の夕方、『安政南海地震』が発生




前日の地震よりも揺れははるかに激しく、やがて南西
の方角から大砲のとどろくような音が聞こえ、大津波
が襲ってきました。




スマトラ島の映像を思い浮かべてほしい




儀兵衛自身も、多くの村人とともに流されたのですが、
八幡神社のある小高い丘にすがりついて助かったとか。
津波の第一波が引いたあと、儀兵衛はまだ下の村に多
数の村民が残っていることを知り、若者に命じて、村
から八幡神社の丘まで避難誘導をさせようとしました。
しかし、すでに日は暮れてあたりは真っ暗だったため、
村人たちが方角を見失わないよう、道筋に当たる水田
の稲むらに、松明で次々と火をつけさせたのです。




収穫を待つ『米』を焼いたんです!




その火に導かれて、人々は八幡神社へと無事避難して
きました。そして津波の第二波が広村を襲いました。
一般に津波は、第二波の方が高いことが多いのです。
儀兵衛の機転によって生命が助かった者は数知れなか
ったと伝えられています。




この夜、津波は4回にわたって村を洗いました




その後、稲むらの火の機転があったとはいえ、36人
の命が失われたことから、儀兵衛は村を将来の津波
ら守るために、翌年から莫大な私財を投じて大堤防の
築造に着手しました。




今も現存する『広村堤防』がそれだ




4年の歳月をかけて完成した堤防は、高さ4.5メー
トル、全長650メートル余りにも及ぶものでした。
現実にこの堤防は、1946年(昭和21年)に起き
た『南海地震』でも威力を発揮し、広村を大津波から
守りました。




守口の文禄堤みたいな話じゃないか




浜口儀兵衛は、こうして村人から生き神様として崇め
られるようになり、明治維新後は、県政そして国政へ
と活躍の場をひろげ、明治4年には、大久保利通の推
挙により、現在の郵政大臣に当たる駅逓頭に任ぜられ
ています。今も広川町(かつての広村)には、大堤防
の上に、浜口梧陵(儀兵衛が後に称した号)の遺徳を
讃える『感恩碑』が建てられています。
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谷口集客技術研究所・谷口肇司(Taniguchi-Tadashi)
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