先日『鹿児島銀行が農業法人を設立し、農業分野に参入』という地方発の特集が報道された。鹿児島銀行ばかりではなく、三井住友銀行、武蔵野銀行などが、ネット検索の『銀行 農業参入』でヒットした。銀行以外にも、NTTドコモ、小田急電鉄、スズキ、日立キャピタル、JR九州・・・こうした大企業のみならず、地方の中小企業でも新規ビジネスの要として農業を掲げるケースが相次いでいる。参入企業数は1,898社(2015年6月末)。2008年は400社あまりで、7年間で4倍以上に増えたが・・・。
【写真:農業に参入した鹿児島銀行】
ネイチャークラブNPOを題材に『農業参入の難しさ』を説いている。
特に、異業種からの参入の80%は撤退の憂き目に遭っている。
その理由は、農業の生産スパンが長く『資金見通しの甘さ』が大きい。
勢いだけでやったら、大やけどをする。
鹿児島銀行の場合は・・・
肥後銀との合併で潤沢な資金がある。
さらに、農業の衰退は『融資先の減少』につながり、
銀行の『利ざや稼ぎ』に支障が生じる。
鹿児島銀行をはじめ『融資先の食品卸会社』などが出資して、
農業法人を設立した。
仰天したのは、就農者である。
・支店長
・融資係
こういう人が農作業に就くべく農業法人に出向しているのだ。
金融機関は『ある年齢』に達したら、
・出向⇒転籍⇒銀行退職⇒転籍先で定年まで働く・・・こんな流れだ。
都銀なら、系列のカード会社やリース会社などの『子会社』もあるが、
地銀になれば、子会社を持つのも都銀ほどは容易くない。
銀行本体に残れない人は、融資先会社に出向⇒転籍・・・に落ち着く。
鹿銀の取り組みは・・・
現在、玉ねぎ生産に力を入れている。
この栽培にかかった『あらゆる事象』を『データ化』し、
将来的には『誰でも営農に従事できる足場』を作っている。
こんなのは本来、JA(農協)なんかがやっていると思っていたが、
案外、そうでもないのか、
JAがデータを出し渋っているのかわからないが。
鹿銀は、とにかく、さすが金融機関だ。
金融機関の人が軸になっているのだから、
決裁が通れば『仕事の取組みも早い』し、
当たり前だが『交渉力』や『調整力』にも長けている。
トラクターの調達にしても『ふつう』にやっているだろう。
江戸時代じゃないんだから人力にこだわる必要はまったくない。
さて、異業種参入の一般人は3年、5年先まで持ちこたえらるか。
農業は育てた農作物がお金に換わるまでタイムラグがある。
例えば、キャベツを栽培するにも種を撒く準備に5か月、
収穫して販売するまで『さらに5か月を要する』。
長期的な『資金計画』と『確実な資金調達』が不可欠だ。
実際にキャベツの代金が振り込まれたときに、
10か月分の設備費や人件費をペイした上で、
儲けを出さなければならない。
まるで『お産手形(回収サイト310日)』だ。
ジャンク屋の若大将あたりは現金商売の自転車操業。
さらに『PayPal』なんぞで喜んでいるような状態で、
七夕手形(1年物)、お産手形(十月十日)、台風手形(二百十日)など、
長期の回収サイトに匹敵する『売掛にもならない仕掛品』に耐えられるのだろうか。
はなはだ、疑問だ。
緻密な資金計画や栽培計画を積み重ね、
やっと3年後に事業の道筋が見えてくるものである。
農作物の販路を拡大させ、
ビジネスを軌道に乗せるまでには2年以上かかる。
つまり、参入から5年先のビジョンや体力(資金)がない企業や団体は、
泣かず飛ばずのまま早期撤退を余儀なくされてしまう。
だから『慎重にやれ』と警鐘を鳴らした。
理念の訴求にばかりIT技術や時間とお金を費やして、
利益が上がらなければ本末転倒だ。
農業ビジネスは『1個のいちごをいくらで売るか』ではない。
ネイチャークラブNPOの発起人が、
『一個1万円のいちごも作れる・・・』とか言っていたが、
正直なところ、心の中では『ヘソで茶が沸く』と笑ってしまった。
農業ビジネスは、先物取引だ。
わかりやすくいえば6か月で、
12トンのトマトを1,200万円で納品するということ。
いわば契約栽培という名の『先物取引』だ。
さらにいえば『1個1万円のいちご』の価値などなく、
こんな絵空事は『どこも取引などしてくれない』。
トマトの鮮度管理よりも大事なのが・・・。
タイムリーな情報である。
農業のリスクヘッジはキリがない。
そこにIT技術を費やすよりも、
『〇月〇日までのトマトの生産高は〇トンになる』という、
収量予測を常に発信できる企業のほうが、
マーケット側からの信用力が増し、
次のビジネスに繋がりやすい。
あたりまえの話だ。
地銀の場合は、ムラ社会の中の地域密着だから、
外様が、ムラ社会で悩む要素はない。
逆に、銀行がムラ社会で『いじめ』を受けたら、
融資先の農家に圧力をかけて『では、一括で返済を!』と迫る。
ただの『頑固者の一本気』とは『営業工作』のレベルが違う。
銀行が『誰でも営農に参入できるように』とデータを取っているのは、
将来的に、失敗なく就農できる道筋を作っている。
かといって、ITに傾倒し過ぎ感はない。
今、畑にいる元支店長や元融資係が生涯、畑にいるとは考えにくいが、
こういう人たちは、Iターンの就農希望者も『心強い』はずだ。
こうやって、将来の雇用にまで視野が行き届き実践している。
ネイチャークラブNPOの発起人は、
『行きすぎた資本主義に抗う』のを『美徳』にしているが、
そんなものは、どうでもいいことだ。
いかに、辛抱強く、息長く就農できるか・・・。
きちんと資本主義が機能し、
働いていなかった人たちも『みんなに喜ばれ働く価値』を感じる、
そんな流れが全国的に広がれば『世の中、もっとよくなる』と思う。
私は、家の2平米程度の庭栽培ですら手一杯だ。
鹿銀のように、今年は『データ取り』をやってみて、
植木鉢でも、プランターでもカンタンに取り組める事例を作っていきたい。
まぁ、草引き程度で文句ばかり言っているから、
どうなるか、わからないが・・・。
まぁ、テレビの紹介は、半値六掛け(30%)程度で見て丁度だろうが・・・。
異業種からの参入は『やり方』も大事だが、
どこと、どのように組む(業務提携)するかが、
成功のカギを握っているといっても過言ではない。
そこを外さなければ『農業は、成長産業』だと思う。
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▼鹿児島銀行、農業の取り組み▼
http://www.nikkei.com/article/DGXLZO07794010Z20C16A9LX0000//
★日本経済新聞をリンクしています★
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