一番はじめに就職する会社が、人生の方向性に大きな影響を与える・・・という話を、随分前に書いた記憶がある。私の場合は、メーカー系の自動車ディーラーだった。ここでは、入社後しばらくして『簿記3級と損保の資格を取るように』と言われた。損保の資格は、自賠責をはじめ各種保険を扱うために必須科目だ。さらに、営業報告を作るにしても『数字』の世界だから、経理が見てわかる報告書が必須なので、簿記を持っていた方が『社内の共通語』としてもスムーズだ。簿記の能力は、その後の広告屋でも、独立後も『活用』できたし、今もなお『日々の計数管理』でも便利に使えている。
【写真:資格を取る取らないは別にして、簿記の知識は備えていて損はない】
簿記は、取引を『原因』と『結果』の側面から把握する。
一年間の商売を通じて、
いくら儲けたかを『損益計算書』で計算する。
その『損益』によって『事業所の財産』が、
『どのように変化したか』を『貸借対照表』で計算する。
大事な財務諸表は、この2つに集約される。
この2つの書類を見れば『儲け』や『財産』がひと目でわかる。
詳しいことは専門書に譲るが、
よく『ウチの会社、赤字やわ』とか聞くが、
社員が『ムードだけ』で『赤字、赤字』と言っていることがある。
会社は、社員にハッパをかけるために、
朝礼なんかで『この厳しいご時世を乗り切るために・・・』とか言うが、
誰も『どう、厳しいのか財務諸表を見せてほしい』とまでは言わない。
ただ、陰気くさくなるだけである。
簿記は、経理関係や金融関係者だけのものではない。
意外にも、メーカーの技術者が簿記や会計を知っているのだ。
例を挙げれば『在庫管理』にしても、そう。
『在庫管理』は重要な要素だし、
『原価計算』も必要だから知らないと話にならない。
簿記を知っていたら、自分の仕事を数字で捉えられる。
将来、ベンチャー企業を立ち上げて独立しようというなら、
なおさら簿記を知らないと、
経営などできっこないのである。
必ずしも資格試験を受ける必要はない。
『損益計算書』と『貸借対照表』が、
『どんなものか』くらい知っていないと、
やみくもに『銀行は必要なときにカネを貸してくれない』などと、
見当違いの恨み言をいうのがオチである。
いきなり資格試験となるとハードルが高いかも知れない。
今、とりあえず『自分の収入と支出』について、
簿記的な帳簿の付け方をやってみてもおもしろい。
少しわかってくると『時系列に記録する金銭出納帳』が、
いかに面倒くさくてムダな作業かがわかる。
もちろん、会社の経理では必要な帳面だが、
個人の収支把握程度なら『勘定科目ごとの計算書』でも十分なのだ。
簿記や経理がわからないと『勘定科目』の意味すらわからない。
仮に、今、トレンドといわれる『農業』に就農するとしても、
種子や苗や薬品を仕入れたら『仕入れ帳』に記載する必要があるだろう。
軽トラックを購入するのに融資を受けたら『借入金』で記載する。
トラックの費用だって『減価償却』の計算だって必要だ。
簿記を知らないと減価償却がいいかリースがいいかの判定すら怪しい。
そして作物ができて、売れたら売れたで『売上計上』する。
売上 − 経費 = 損益
多くの人は、損益どころか『売値−仕入れ=粗利』で一喜一憂している。
よくきく『儲かっている、儲かっていない』の多くが、
ただの『粗利計算』どまりになっている。
パチンコ屋に行って『勝った、負けた』と同レベル。
簿記の知識を持とうとすると、
自然と興味の方向が変わってくる。
知り合いたい人や知り合える人も変化してくる。
アドバイスも『素人の感覚』から『プロの助言』に変わる。
多くの自営業が経理を会計専門家に『丸投げ』している。
単式簿記の出納帳(小遣い帳レベル)ですら自分でやらない。
なんでもかんでも現金取引なら単式簿記でも結構だが、
商売ってのは仕入れや販売先があるから、
『貸方』『借方』などの『振替伝票』も実務レベルで発生する。
『入金』があれば『入金伝票』を起こすし、
『出金』があれば『出金伝票』を起こして処理をする。
事業は『単式』など飛ばして『複式簿記』が基本だ。
起業に簿記などいらないという人もいるかも知れないが、
実際に確定申告を行う場合に、
簿記の知識がないと申告間際に慌てる。
結果的に『税理士』に『余分な顧問料』を払う羽目に。
起業すると同時に『事業専用の銀行口座』を作る。
日々の金銭出納帳の代わりになるのが銀行の通帳だ。
事業規模が小さいうちは『こんなもん』でも十分だ。
ところが、起業して何年も『公私混同した個人口座』でやっている人がいる。
これは、後後、ややこしいこともあるから分けておくべきだ。
簿記の知識を持っているのと持っていないのとでは、
後年、大きな差が出るだけでなく、
日々の銭勘定すら『頭の中』でやらねばならず、
こんなことをやっていたら『本業の数字』がまともに把握できない。
簿記は『事業の可視化の最低条件』である。
よく、『そこそこ大学』を出ているのに、
事業に失敗したとか聞く。
周囲は『頭のいい人がどうして』と不思議がるが、
頭がいいとかそういうもんじゃない。
大学を出るというのは『おしなべて暗記力がよい』という程度。
簿記など、商業高校で『あたりまえ』のようにやっていることなのだが。
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※知的刺激の材料として活用いただくために、
あえて誤解を招くような過激な表現をしている場合もあります。
『こりゃ違うんじゃないか』と疑問に思うところから、
発想や気づきを深めるきっかけにしていただければ幸いです。
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