●OTA(On The Air)

道楽、世間批評、いろいろと・・・。

●一見さん、お断りどす。

何年かぶりに『富山の置き薬屋』がセールスに来た。本当に富山の会社かどうかは怪しい。話し方が『べたべたの河内弁』の営業マンだったからだ。特に、家に来るセールスを断るのは『主に私の仕事』である。家内は、ストレートに『間に合っている、いらん』でおしまい。私は少し違って、無意識に『京都風』に『やんわり』断る。まぁ、邪険にしてもいいのだが、個人宅のドブ板営業のしんどさも知っているから、多少はねぎらいつつも、断る。その断り文句は・・・。



【写真:京都弁の『どす』を多用すると相手は、必ず引いてしまう】


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◆一見さん、お断りの本質。
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たまには、京都人らしいことを書いてみる。


京都の花街(かがい)の『一見さん、お断り』は、よく知られている。
概ね『一見さんやったら、どんなおもてなししたらええのか、
からしまへんやろ』という風に思われている。


花街のホンネは、それ以外にもある。


確かに、一見さんだと氏素性がわからないから、
どういうのがお好みで、どんなサービスを提供したらいいのか、
初めてだったら、わからないからお断り・・・というのは建前だ。


花街、お茶屋さんは『信用取引』の商習慣である。


たまに、新大阪着のお客さんをお迎えに行き、
京都の祇園町までお送りすることがある。
まぁ、縁故でお迎えのオファーがあるのだが、
そのお迎えのタクシー代は『お茶屋』が立て替える。
私は、お茶屋さんから運賃をいただくことになっている。


接待などで『おカネの出所がわからない』から依頼元から頂くのが筋だ。


・送迎のタクシー代
・芸妓さん、舞妓さんの花代
・料亭や仕出し屋から取るお食事代
・飲み物代
・二次会に流れたら、その費用
・帰りのタクシー代


これらが『お座敷』の費用一式である。


私は、大阪から出向いてお送りするからその場で運賃をいただくが、
その他の仕出し代やらの『もろもろ』の費用は、
後日、お茶屋さんに『請求書』が届くシステムである。
極論すれば、馴染み客は『手ぶら』でお茶屋に行っても大丈夫だ。


ということは、支払いはツケで後払い。


カンタンに言えば『売掛金』だ。
お座敷の成り行きによって値段は変わってくるが、
女将さんは『だいたいの値段』こそわかるものの、
やはり『だいたい』ではいけない。
きちんとした金額が届いて『そこから正確に請求書を回す』。


売掛にする以上、一見さんでは『信用』が置けない。


そういう理由から『一見さんはお断り』という商習慣になっている。
また、一見さんだと『踏み倒されたらお茶屋の立て替え』が丸損である。
普通で考えたら『自分の家に通りすがりの人を家に上げない』。
ホームパーティをするにしても『誰かが連れてきたから家に上げる』。


それと、同じことで、別段『お高くとまっている』のではない。


ホームパーティなら『親しい友人が連れてくる』という保証がある。
『〇〇さんの友人なら安心』『〇〇さんの親友なら大丈夫』、
この感覚と、京都のお茶屋さんの考え方は『ほぼ同じ』なのだ。


信用が置ける人かどうかわからないと不安だ。


飲みだすと『クダ』を巻いたり『絡んだり』、
暴れて、ふすまを破いたり、部屋や服を汚されては困る。
お茶屋さんともなれば調度品も着物も一流だし、
年季明けになっていない若い舞妓ちゃんの着物が汚されては、
その『洗い』や、場合によっては『ほどいて洗って、再仕立て』の費用は、
お茶屋さんが負担する。


馴染み客が連れてきたら、一見の人も中に入れる。


請求書を後日に送って集金にしても、
わざわざ出向いて世間話をしながら回収する。
昔から『カネの切れ目は縁の切れ目』というが、
ツケ払いで集金に行く手間は『縁を切らさない』という気持ちも働く。
ツワモノの女将さんは『次にお座敷に見えてから前の請求書を送る』こともある。
なんでもかんでも、すぐに回収したらいいというものではない。


持ちつ持たれつ、ツケがなくなると縁が切れるのを避けるのだ。


もちろん、集金に行けば『相手の商売の様子』も見られるから、
定期的な集金は『取引先の与信調査』も兼ねている。
それだけに、集金される側も『きちんと対応する』のである。


今風の、ネットで注文して、カード決済とは『対極』だ。


お茶屋さんはじめ、ツケで後払い、集金に足を運ぶというのは、
今風ではないし、手間がかかるし、合理的でも効率的でもない。
だが『顔の見えるお商売』で『人間味のある取引』でもある。


さらに、盆暮れの支払い、節気払いという商習慣。


人のことを『人間』と表現するのは、
人と人の『間合い』を大事にする日本人の心の表れだろう。


一見さん、お断り・・・


表面的には、お高くとまり『冷たい感じ』がぬぐえないが、
土地に根付いた商習慣はじめ『人間関係を大事に育てる心遣い』や、
きめ細やかな『ほんまもんのおもてなしの心』、
京都の文化、風俗、精神性に立脚したさまざまな要素で、
町全体が機能しているのである。


あたりまえだが。


紹介者の頭越しに『勝手な商売』をしたら『行儀が悪い人』と言われ、
商道徳がわかっていない人と烙印を押されいっぺんに信用を失う。
10年ほど前、私自身、異業種の集まりなんかをやっていて、
参加者同士が『私の知らないところで、
私と同じ広告屋の商売を勝手にやっていた』ことがあった。


残念だったが、即刻、二者ともお付き合いを断った。


そんなことを思い出したが『知らず知らずに身についた京都人』を、
富山の置き薬屋さんが来て改めて認識した。
もっとも『間におうてますし、ええですわ』と断ってもいいのだが、
どうも、口をついて出るのが『どちらはんのご紹介?』である。
大阪で『どちらはんのご紹介?』とは『想定外』だろうから、
相手は、言葉に詰まってしまう。


さらに、今はお年寄りも使わない『どす』を使うと・・・。


大阪で京都弁が出ると『相手が引きまくる』のは、
これまた『新たな発見』だった。
また、SNSで『希薄な友達』を作りたくないのも、
京都のDNAがそうさせているのかも知れない。


家の二階にも『すだれ』をかけて、
『なんちゃって、京町家』にでもしてやろうか。


なんとなく、京都人でよかった・・・と思うひとときであった。


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▼ちきりんの日記▼
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★なかなか、鋭い視点で、勉強になるよ★
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